松山地方裁判所 昭和25年(行)15号 判決
原告 向井善勝
被告 国
一、主 文
訴外愛媛県知事が原告に対し(一)昭和二十三十二月三十一日附買収令書の交付により別紙第一目録記載の農地につきなした買収処分(二)昭和二十四年三月二日付買収令書の交付により別紙第二目録記載の農地につきなした買収処分(三)同年十月二日付買収令書の交付により別紙第三目録記載の農地につきなした買収処分はいずれも無効であることを確認する。
訴訟費用は被告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、その請求原因として、訴外愛媛県知事は原告に対し(一)昭和二十三年十二月三十一日付買収令書の交付により原告所有の別紙第一目録記載の農地につき買収処分をなし(二)昭和二十四年三月二日付買収令書の交付により原告所有の別紙第一目録記載の農地につき買収処分をなし(三)同年十月二日付買収令書の交付により原告所有の別紙第三目録記載の農地につき買収処分をなしたが、前掲(一)の買収処分については、南伊予村農地委員会は、昭和二十三年十二月十日買収計画を樹てたけれども、自作農創設特別措置法(以下自創法と称す)第六条に基く公告の手続をなしておらず、前掲(二)の買収処分については、右農地委員会は、同条に基いて買収計画、公告、縦覧等の法定手続をなしておらず、前掲(三)の買収処分についても右農地委員会は同条に基いて買収計画、公告、縦覧等の手続をなしておらない。然しながら、国が法に基いて農地等を買収するには個人の権利、利益を保護する立場上、買収計画、公告、縦覧等の法定手続を経ることが絶対に必要であつて、買収処分の有効要件であるから、本件各買収処分が前記の如く法定手続を欠く以上、無効というの外ない。仮りに、前掲各買収処分に際して、買収計画、公告、縦覧等の法定手続を経ているとしても、原告は、各買収計画に対してはそれぞれ法定期間内に適法な異議申立をなしたのに拘らず、前記農地委員会はこれに対する決定をなさず、該決定のなきまま本件各買収処分がなされたものであるから、前掲各買収処分は自創法第七条、第八条に照していずれも無効である。仍て、本件各買収処分の無効の確認を求めるため本訴に及んだと述べた。(立証省略)
被告訴訟代理人等は原告の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として、原告主張事実のうち、訴外愛媛県知事が原告に対し、原告主張の日付の各買収令書を交付して、原告主張の各農地につき、それぞれ買収処分をなしたことは認めるが、その余は否認する。南伊予村農地委員会は、原告主張の各農地についてはそれぞれ買収計画を樹て、公告、縦覧等の法定手続をなしたのであるから、何等違法はない。また原告から異議の申立はあつたが、縦覧期間経過後であつたから、右農地委員会は右申立を却下し、その後愛媛県農地委員会に対し、陳情書が提出され同委員会において受理審議の結果、訴願期間経過後であつたので却下したものであつて、この点にも違法はないと述べた。(立証省略)
三、理 由
訴外愛媛県知事が原告に対し(一)昭和二十三年十二月三十一日付買収令書の交付により、原告所有の別紙第一目録記載の農地につき買収処分をなし、(二)昭和二十四年三月二日買収令書の交付により原告所有の別紙第二目録記載の農地につき買収処分をなし(三)同年十月二日付買収令書の交付により原告所有の別紙第三目録記載の農地につき買収処分をなしたことは当事者間に争いのないところである。而して、前記(一)の農地につき南伊予村農地委員会が昭和二十三年十二月十日買収計画を樹立したことは原告の自認するところであり、(二)の農地については昭和二十四年二月十日買収計画が樹立せられたことは、成立に争のない甲第十五号証第二十七号証の一、二、三及び証人本田惣太郎の証言によつて認められ、(三)の農地については昭和二十四年九月二十一日頃(同日かそれより数日前)買収計画が樹立せられたことは、成立に争のない甲第二十四号証、第二十八号証の一、二、三により推認せられる。而して原告は右の各買収計画については、いずれも公告がなかつたと主張し被告はこれを争うのでこの点について考えるのに、自創法第六条第五項によれば、市町村農地委員会は農地買収計画を定めたときは、遅滞なくその旨公告することが要求せられており、他に買収計画を外部に表示する方法については特別の定めがないから、買収計画は法定の公告によつて外部に表示せられてはじめて、行政客体に対し公法上の法律効果を生ずるものであると解せられるから、買収計画という行政処分は公告によつて効力を発生し、公告なきときは無効であると、いわねばならず、また買収処分は、有効な買収計画に基いてなさねばならないから、買収計画が無効なときは、それに基いてなした買収処分は結局無効となると解すべく、従つて、法定の公告手続を経ない買収計画に基く買収処分は無効であるといわねばならない。
従つて法定の公告は買収計画の効力発生要件であり、買収計画が有効に成立したことは買収処分の効力発生要件であるから、結局買収計画について法定の公告あることは買収処分がその効果を発生するための有効要件であると解すべきである。従つて、各買収計画について法定の公告のあつたことは本件買収処分が有効であると主張する被告において立証責任を負担すると解すべきところ、本件においては各公告の有無についてこれを認定すべき資料がないから、その不利益は被告に帰し、各買収計画についていずれも法定の公告はなかつたものと認めざるをえない。而して買収計画の公告手続を経ないでなした買収処分が無効であることは、前掲判断のとおりであるから結局本件前掲(一)(二)(三)の各買収処分はいずれも無効である。仍つて、他の判断を俟つまでもなく原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 加藤謙二 橘盛行 荻田健治郎)
(目録省略)